ベサン・ウィリアムズ 言語聴覚士(SLT)/行動分析士BCBA ゲストブロガ

保護者の方に補助・拡大コミュニケーション様式(手段)の導入を勧める話をすることは決して簡単なことではありません。中には、発語を諦めたということ?と感じる保護者の方もいらっしゃるかもしれないですが、決してそうではありません。良いセラピストは、常に発語を目指し続けながらも、必ず、子どもがすぐに獲得できる方法で意思表現できるように教えます。そうすることで、自分のニーズや要求を伝えられない子どもが抱える大きな不満/ストレスに即座に対処し、それらを和らげることができるからです。この基本的な人権が満たされることで、子どもは必要な手厚い支援や指導にもより前向きに取り組めるようにもなるのです。
以下に私がなぜPECS🄬(Picture Exchange Communication System🄬 絵カード交換式コミュニケーションシステム™)を第一の選択肢とするかの理由について紹介します。
- PECSは実践的な支援の方法だからです。
PECSは、効果的なコミュニケーションでは絶対必要な、人に働きかける、という要素を学び実践できるようになるからです。子どもが示す要求が受け止められ、満たされるためには、子どもはその要求をかなえてくれる人の所へ行く必要があります。これは、音声表出機器を早くに取り入れてしまった子ども達によくみられる、部屋の隅っこに立ち、背を向けたまま「チョコレートほしい」といったメッセージを何度も繰り返しボタンを押し続け発信する、という行動を取る子たちとは大きく異なるからです。
- PECSは子どものニーズを中心に組み立てられ、個々に合わせたプログラムだからです。

PECSを始める際には、まず対象の子が何を好むか、何を必要としているか、何を求めているかを慎重に把握することが出発点となります。自分にとってモチベーションとなり、
興味を引くものを要求し、それがすぐに手に入るのです。生活の中で使う物の絵や写真が載っている本や園庭に置いてあるコミュニケーションボードは一見、素晴らしいものに見えるかもし
れませんが、それらの写真やカードがコミュニケーションの発達が遅れている、あるいは障害のある子どもにとって興味を引くものかどうかを判断する手掛かりはありません。余談になりますが、私は、子供または大人がコミュニケーションボードを自発的に利用しているのを見かけたことが今までに全くありません。こうしたボードは実際の有用性よりむしろ、こちら側の「こういう言葉を使って欲しい」という理想を掲示しているだけではないかと思うことが時々あります。
- PECSは子供の自律性を尊重しています。
残念ながら、特別なニーズを必要とする多くの子どもたちの生活の中では押し付けがましい身体的な促しが頻繁にみられますが、PECSはそれを最小限にしています。PECSの一番初めの段階では、もう一人の大人が子供の背後に静かに立ち、子供が自発をしたら絵カードに手を伸ばして大人に渡すように優しく促します。そうすると一秒以内にその要求が即座にかない、その後、大人は身体的な接触を全て辞めていきます。この段階で身振りによる促しを用いることが多いですが、その子にとって適切な促し方が常にお勧めです。ここでの目的は、絵カードに手を伸ばして他の人に渡すと良いことだけが起こることを、子どもにできるだけ早く理解してもらうことです。それゆえ、身体的な促し手が必要となるのは一時的なものにすぎません。多くの場合、一時間以内には身体的な促しは必要なくなります。
- PECSは明確で、だれにでも理解しやすい。

PECSはわかりやすい、曖昧ではないコミュニケーション手段です。絵カードの意味に誤解が生じることはまずありません。も
し生じた場合は、PECSの絵カードに文字でその内容を記載すればいいだけです。手話は、たとえ子どもに関わる人々が手話に慣れている場合でも、手話
が正確に表現されないことが多いため解釈が難しいことがあります。特に細かい運動能力や粗大運動能力、模倣に課題がある場合です。子どもが店の人にアイスクリームの注文をする際に絵カードを手渡すことを想像してみてください。誤解の余地がなく、誰もが満足してその場を後にすることができます。
5.PECSは経験を通じて絵カードの意味を学びます。
PECSを始める前に、子どもが絵やその絵の意味を理解している必要はありません。絵の意味を理解する方法を学ぶこと自体が、重要なPECSの指導の一部です。PECSを始める時点で、絵の意味を理解している子どももいれば、全く分からない子どももいます。PECSには具体的で精巧な指導法になっているため、子どもたちは素早く、そして容易に絵を認識するスキルを身につけることができます。
目標:生涯使えるコミュニケーション
補助コミュニケーションという言葉は、第一のコミュニケーション手段としての発語を教え、発達させる取り組みと並行して、何か別の手段を導入する必要があるという専門家の目的を強く示しています。多くの子どもたちとかかわっていく中で、それが可能になり、徐々にPECSの使用から発語へ移行する子たちが数多くいました。一方で、発語が十分に機能的なものにならない子どももいました。しかし、こうした子供たちもPECSを使ってさえいれば、自分のニーズや要求を伝え続けることができるのです。
子どものコミュニケーションのスキルを教えることは、全ての教育現場において、最優先されるべきことです。自分のすることや好みを一切伝えることができない人は極めて不幸であるか、あるいは激しい怒りを感じている可能性が高いでしょう。多くの場合両方です。これは耐え難いものであり、倫理的にも大問題です。PECSは、こういったことに対して必要なスキルを教える喫緊の解決策になる、エビデンスに基づいたアプローチです。
PECSは科学的根拠に基づいた、実践的で、思いやりのある指導法であり、子どもたちに自分の意志を伝える手段を与え、いらだちを軽減し、豊かなつながりを作り出します。
著者について
ベサン・ウィリアムズは、英国を拠点とする言語聴覚士および公認行動分析士(BCBA)の二重資格保持者であり、コミュニケーションに課題を抱える子どもたちへの支援において豊富な経験を有しています。すべての子どもに「声」を与えることに情熱を注いでおり、PECS🄬(絵カードコミュニケーションシステム™)などのエビデンスに基づいた実践的な指導法を用いて、学習者が意思疎通に役立つ実用的なコミュニケーション能力を身につけられるよう支援することを専門としています。
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