PECS®  についての事実 

PECS® は拡大/代替コミュニケーション(Augmentative/Alternative Communication;略してAAC)の一つです。

AACとは、発語以外の方法で、もしくは発語に加えて使うコミュニケーションの方法のことです。 AACは、幅広い年齢の方々、あらゆる人々によって使用されます。代替コミュニケーションは、まだ発語がない場合、何らかの理由で発語しなくなってしまった場合に使うことがあります。拡大コミュニケーションは発語がきちんと理解してもらえない場合や日常的なニーズを満たすのに複雑な文を作れない、もしくは、具体的なことが伝えられない場合に用いられることがあります。
PECS®、手話、ピクチャー・ポイント・システム、音声表出機器など、AACには多くの選択肢があります。

PECS®で発語が抑止されることはない

PECS®の指導法が発語の発達を阻害したり、妨げたりすることはないことが研究により示されています。実際にはPECS®の指導法は発語の発達を促すことが研究により示されており、PECS®の指導法を使えば、もっと発語でコミュニケーションがとれるようになる人もいるでしょう。

PECS®は誰でも実践できます

ピラミッド教育コンサルタントは誰もが参加できるワークショップを提供しており、これまで何十万にもの保護者、支援者、兄弟姉妹にPECS®を様々な場面でうまく導入できるよう講義をしてきました。作業療法士(OT)、言語聴覚士(SLP)、理学療法士(PT)、準職員、教師、ソーシャルワーカー、BCBAなど、さまざまな経歴を持つ専門家も、1歳半から80歳代の成人に対してPECS®を実施する方法を学んできました。保護者でも、様々な経歴や訓練を受けた支援者や専門家でも誰でも、家庭、学校、地域社会など、どの環境でももPECS®を実施できることが多くの研究結果からわかっています。弊社が主催するPECS®ワークショップはPECS®の手順と正しく実践することを学ぶ上で皆さんをサポートしながら進めていくので、受講することを強くお勧めしますが、PECS®の手順はPECS®マニュアルを読むことで学ぶこともできます。弊社のウェブサイトそしてYouTube🄬チャンネルなどで多くの無料のリソースを提供しています。

PECS®は表出コミュニケーションを教える

PECS®の手続きの初期段階では、コミュニケーションは相手にメッセージを伝える必要があることを中心に教えます。私たちは意味のあるコミュニケーションスキルを今すぐ教える事に焦点を置いているので、初期段階の実践では学習者の興味を示すものや事がらが大切になります。PECS®では自発的にコミュニケーションを取り始めることと要求することを最初に教え、最終的にはコメント(例:OO感じます、それはOOです、これ好きではないです 等)することや質問に答える事、そして会話を交わす事へとつなげていきます。「いいえ、いらない」を示すことから始まる自己を弁護するスキルを教え始めることにも早い段階から取り組み、学習者の選択を尊重するよう念入りに教えます。PECS®はただ単に要求することを教えるだけでなく、援助の要求や、他の人と一緒に活動に参加する、質問をする、またいらない/ほしくない時に伝えるなど、その人にとって重要なスキルを教えるものです。

PECS®は効果的な指導法を使う

PECS®を始める時は、コミュニケーションを教える対象の人々の話を注意深く聞いたり観察することで、学習者主導の関りの中から始めます。どのスキルを教えるにしても、私たちはお手伝い(プロンプト)することが多いでしょう。このお手伝い(プロンプト)は学習者がまだサポート無しではできないコミュニケーションなどのスキルを身につけるための手助けとなる指導方法です。プロンプトとは決して人の行動を制限したり、人に行動させるために使われるものではありません。年齢の小さい学習者は、まだ口頭の指示に従ったり、見本を見て真似をすることができない方たちが多いです。PECS®の手順の中で使われる最初のプロンプト(一般的に身体的なガイド)は新しく学び始めたコミュニケーターが絵カードを渡す行動をうまく教えるために使われます。PECS®の指導法が他のコミュニケーション指導法と異なるのは、学習者に何が欲しいかを尋ねるなど、コミュニケーションの相手からの発信を待つのではなく、自分自身から発信することを最優先に教えるっことです。コミュニケーションパートナーは、常に学習者が自分から発信してくるよう待ちます。もし、学習者が強く抗議したり、抵抗したりした場合、すぐに絵カードを交換する指導を中止します。学習者が何を必要としているか、何に興味を持っているかを見極めるようすぐに対応しますが、決してコミュニケーションを強制しません。 私たちの目標は、学習者の自立した、自主的なコミュニケーションであるため、学習者のパフォーマンスに合わせながら、全てのプロンプトをできるだけ素早く取り除いていきます。

PECS®は複雑で特異な教材を必要としない

PECS®は絵カードを使ったコミュニケーションシステムです。PECS®ユーザーは絵カードを収納して持ち運べることが大切です。PECS®を指導するために使う教材を作るにあたって、特に決まったものを使う必要はありません。ある研究で、指導で使われる絵カードの種類(写真、イラストなど)はスキル習得の速さや有無に関係ないことがわかっているので、支援チームによって作りやすい、学習者にあったカードを使うことをお勧めします。絵カードを長く使うため、絵カードを保護するラミネートすることが多いでが、その他の方法、例えば透明のテープを使う、保護シートを使うこともできるので、ほとんどの教材が手作りできます。PECS®でのコミュニケーション指導で保護者や支援者が工夫して教材を手作りしているのを見るのが私たちはとても楽しいです。

PECS®とピラミッドアプローチは指導と学習する人たちを力づけるために作られた。

教育へのピラミッドアプローチ®(Pyramid Approach to Education🄬; 略してPAE🄬)はアンディ・ボンディ博士によって創案され、家族や支援者に対して指導の「理由」「何を」そして「どのようにして」の要素を提供しています。このアプローチは、「どのように学ぶことを助けることができるのか」と問うことの大切さに焦点を置いています。効果的な学習環境をつくるためのフレームワークを提供することですべての学習者が意味のある、機能的な活動を通して積極的に参加し、学ぶことができるのです。PAEは科学を土台にしたアプローチであり、支援チームや家族が学習者にとって豊かな、ハッピーな、充実した生活を送るために必要なスキルの発展を最適にサポートするためのガイドラインになるものです。PAEは応用行動分析の機能的なアプローチであり、機能的なコミュニケーションと般化に重きを置いています。世界中のピラミッドに勤務するコンサルタント達は、行動分析士、言語病理学士、心理士、教師、そしてその他の様々な資格を持っています。熱心なコンサルタント達が、学習者や保護者、そして支援チームのメンバーと継続した話し合いの中でどのスキルを教えることが今大事なのか優先順位を作るための手助けをすることにプライドをかけています。

PECS®はマニュアル化された手続きに沿って実践され、エビデンスベースの指導方法である

PECS®がエビデンスベースの指導方法であり、その効果を証明する研究の数はたくさんあり、増え続けています。現在は世界中で240を超える研究がその効果を証明しています。研究は最近のものであり、2023年で20個以上のPECS®に関する論文が発表されています。